マーケティングにおける「インサイト」とは、顧客自身も気づいていない深層心理のことを指します。隠れたインサイトを見つけ出すことで、商品開発やマーケティングに活かすことができます。
「インサイトとは具体的にどういうもの?ニーズとの違いは?」「インサイトの見つけ方や具体的な活用事例を知りたい」とお考えの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、インサイトの概要やニーズとの違い、インサイトが重要視される理由や見つける方法、具体的な事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
インサイトとは?
インサイトは、直訳すると「洞察」「発見」「本質を見抜くこと」を指します。マーケティングにおいては、隠れた心理や動機を表す言葉として用いられます。
購買行動における根拠や動機とは異なり、顧客自身も気づいていないような本音や動機である点が大きなポイントです。
消費者インサイトや顧客インサイトとも呼ばれていますが、基本的にはすべて同様の意味で用いられています。
インサイトを捉えた商品・サービスは消費者の心を掴みます。消費者が商品・サービスを購入する理由は明確でないため、深掘りして理解を深めることが大切です。
インサイトとニーズの違い
インサイトと類似した言葉に「ニーズ」というものが挙げられます。ニーズは、「顕在ニーズ」と「滞在ニーズ」の2つに分けられます。
項目
|
概要
|
具体例
|
顕在ニーズ
|
顧客自身が自覚している欲求
|
・喉が渇いたときに水を飲みたい
|
潜在ニーズ
|
顧客自身が自覚していない欲求
|
・毎日どのくらいの量の水を飲んでいるか把握したい
・健康や美容に気を遣いたい
|
インサイト
|
顧客自身が自覚していない心理状態
|
・自分に自信を持ちたい
・水を飲むことを習慣化したい
|
滞在ニーズとインサイトは、「顧客自身が自覚していない」という点で共通していますが、インサイトは滞在ニーズをさらに深掘りした深層心理にあたります。
顧客のニーズは顕在化しているため、インタビューやヒアリングで見つけやすいと言えるでしょう。
一方で、インサイトは簡単に見つけにくいという傾向にありますが、上手くつかめれば商品やサービスの開発・改善に大きく役立てることが可能です。
インサイトが重要視される理由
インサイトが重要視される理由としては、以下が挙げられます。
- 顧客を深く理解できる
- 認知拡大につながる
- 新たな需要を開拓できる
- 競合他社と差別化できる
ここでは、それぞれの理由について順に解説します。
顧客を深く理解できる
インサイトを把握することで、深い顧客理解につながり、これまでできなかったアプローチを行えるようになるのがメリットの一つです。
数多くの競合他社の中から自社を選んでもらうには、顧客の心理を理解したうえで、心を掴む商品やサービスを世に出さなければなりません。
同じ商品やサービスを利用して得られる体験や価値はさまざまなので、顧客理解を深めることで、より的確な商品やサービス開発につなげられます。
認知拡大につながる
インサイトをマーケティングに活用することで、認知拡大につながる点もメリットです。
インサイトを捉えた商品やサービスは、特定の顧客にピンポイントに刺さったり、これまでと異なる層にリーチを広げ、拡散や話題性を高めやすくなります。
また、SNS上で口コミが拡散されれば、「バズ」を生み出す可能性もあるため、爆発的な認知拡大を狙える可能性もあるでしょう。
新たな需要を開拓できる
インサイトを見つけることで、新たな需要を開拓できる点もメリットです。
競争の激しい市場において自社の商品やサービスを選んでもらうには、今までにない新たな需要を満たす商品やサービスを開発することが求められます。
既存の商品やサービスにおいても、訴求方法の見直しや改善につながるため、既存顧客に対しても新たな体験や価値を届けられるようになります。
これまで売れ行きが伸びなかった商品やサービスも、インサイトを捉えて異なるコンセプトで売り出せば、売上アップに大きく貢献できるでしょう。
競合他社と差別化できる
インサイトを掴めば、競合他社との差別化につながる点も大きなメリットです。
インサイトは簡単に把握できるものではないため、競合他社が把握しきれていない可能性も十分にあるでしょう。
競合のいないブルーオーシャンで戦略を展開できるようになれば、顧客の囲い込みや流出防止になり、自社の魅力や価値を高めることができます。
インサイトを把握するメリット
インサイトを把握するメリットは、提供する商品やサービスをはじめ、自社のビジネスモデルに新たな価値を生み出せる可能性がある点です。
インサイトには、顧客に訴求できる商品やサービスの開発・改善につながるヒントが隠されています。
顧客が自発的に「こういうものがほしかった」と思えるような商品やサービスを提供できれば、購買意欲やブランドイメージの向上にも結びつくでしょう。
しかし、インサイトを見つける方法は難しく、手探りでアプローチしなければならない点はデメリットとも言えます。
インサイトを見つける方法3つ
顧客が自覚していないインサイトは、どのように見つけるべきでしょうか。インサイトを見つける方法として、以下の3つが挙げられます。
それぞれ順に見ていきましょう。
データ収集
インサイトを明確にするには、定量的・定性的なデータの収集が必要不可欠です。代表的なデータの収集方法としては、下記が挙げられます。
- アンケート
- インタビュー
- ソーシャルリスニング
- システム・ツールの活用
|
定量的なデータとは、具体的な数値で表すデータのことを指します。Webサイトのアクセスやアンケートの結果などが該当します。
定性的なデータとは、消費者の感情や心理など、数値で表しにくいデータのことです。1対1のインタビューやグループインタビューを通じて、複数人のサンプルを集める必要があります。
また、元々社内に蓄積しているデータを整理することもおすすめです。
■関連記事
口コミマーケティングとは?メリットや効果的な手法・成功事例も紹介
データ分析
データを収集した後は、分析を行いましょう。アンケートやインタビューで収集したデータは、定量データと定性データにそれぞれ分けて分析します。
収集したデータ量が多いほど、精度の高い分析を行うことができます。しかし、膨大なデータを手動で分析するのは非常に大変な作業なので、分析ツールを活用して効率化することが大切です。
主な分析ツールとしては、アクセス解析ツールやカスタマーデータプラットフォーム(CDP)、データマネジメントプラットフォーム(DMP)などが挙げられます。
■関連記事
X(Twitter)の分析ツール8選|分析の重要性や項目も解説
フレームワークの活用
インサイトを可視化するには、ペルソナと共感マップの作成が効果的です。
分析したデータを用いて、「ペルソナ」を設定しましょう。ペルソナとは、年齢・性別・地域・職業・年収・家族構成・価値観など、細かな顧客情報を設定することです。
ペルソナを設定することで、自社のターゲット層をより深掘りできるため、商品やサービスの開発・改善を戦略的に進めることができます。
また、ペルソナを設定した後は、顧客の感情や行動を理解するための「共感マップ」を作成しましょう。
■共感マップの要素
- Think and Feel:考えていること・感じていること
- Say and Do:言っていること・行動
- See:見ていること
- Hear:聞いていること
- Pain:痛み・ストレス
- Gain:得られるもの
|
共感マップに当てはめることで、顧客の課題や解決策、ニーズを把握できるようになるため、顧客に刺さるマーケティングを展開できます。
■関連記事
SNSマーケティングで重要なペルソナ設定とは|具体例や作成のコツを紹介

インサイトマーケティングの事例
ここからは、インサイトマーケティングの事例について紹介します。
カップヌードル リッチ

参照:日清食品
日清食品のカップヌードルのインサイト活用事例です。
カップヌードルは、一般的に「若者が食べる」という印象が根付いています。しかし、高齢化が進む日本においては、シニア層へのアプローチが重要な課題です。
そこでターゲットとなったのが「アクティブシニア」と呼ばれるユーザー層で、新しいモノやSNSなどでの情報発信に積極的なシニア層のことを指します。
このターゲット層は健康志向と思いきや、「自由に好きなものを食べており、健康のためにおいしさも諦めたくない」というインサイトが隠れていました。
そして、贅沢なスープにこだわりつつ健康にも配慮した「カップヌードル リッチ」を開発し、発売7ヶ月で1,400万食を突破したようです。
和定食チェーン店
ある和定食チェーン店では、地下や2階以上の店舗を構えている戦略を立てています。
一般的に、集客を増やすには1階に店舗を置くのが理想とされています。しかし、新たなターゲット層の開拓のための施策として、女性に向けたコンセプトを開拓。
女性ターゲットの気持ちに着目する中で、「1人でお店に入るところを見られたくない」というインサイトを発見しました。
そのため、地下や2階以上など人目につきにくい場所に店舗を構え、野菜を使ったメニューや綺麗な内装を充実させて、女性客の心を掴んだそうです。
インサイト×SNSを組み合わせてマーケティングに活かそう
顧客の購買意欲を掻き立てるには、顕在化しているニーズに対応するだけでは不十分です。顧客のインサイトを把握し、滞在的な心理を意識することによって、マーケティングの成果が向上できるでしょう。
インサイトを把握するには、データの収集や分析を行い、柔軟な視点で顧客行動を観察することが大切です。インサイトの発見は簡単ではありませんが、自社に合った調査方法で新たなニーズを発見していきましょう。
インサイトの収集・分析を行う際は、SNSを活用することもおすすめです。自社SNSに蓄積されたデータを活用すれば、SNS運用やマーケティングの強化が行えるでしょう。
