企業の製品やサービス、あるいはブランドの価値を伝えて、顧客に認知・信頼・愛着を与えるためには、ブランディング戦略が必要不可欠です。
「ブランディング戦略の成功事例を知りたい」「ブランディング戦略とは具体的にどういうもの?」とお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ブランディング戦略の成功事例や、事例から見る成功のコツ、ブランディングの種類などについて解説するので、ぜひ参考にしてください。

ブランディング戦略とは?
ブランディングとは、製品やブランド、企業そのものに対して、消費者に統一的な印象を持ってもらうことで、競争優位性や企業価値の向上を図る取り組みです。
単に、製品やサービスを宣伝するだけではなく、企業文化や顧客へのコミュニケーションなど、あらゆる企業活動に関わります。
ブランディング戦略で用いる手法として一般的なものは、「イメージ」「ロゴ」といったビジュアルを用いた戦略や、マーケティング活動をもとにした施策などです。
こうした要素を考慮して、ブランドの認知拡大や価値向上に取り組み、共通イメージを持ってもらうことでブランディング戦略を実現できます。
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ブランディング戦略の成功事例6選
ここからは、ブランディング戦略の成功事例について紹介します。
1. 星野リゾート
星野リゾートは、リゾートホテルや温泉旅館などを運営する総合リゾート運営会社です。
企業のコンセプトには「リゾート経営の達人」と掲げており、ブランドのコンセプト設計を徹底しています。
3つのブランドには、それぞれ以下のようなコンセプトを持たせており、各施設において客層を奪い合わせないように設計されています。
- 星のや:各施設が独創的なテーマで圧倒的な非日常を提供するブランド
- 界:心地よい和にこだわった上質な小規模温泉旅館
- リゾナーレ:洗練されたデザインとアクティビティを提供する高級リゾートホテル
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日本の自然や文化を感じられる滞在を提供しており、国内だけでなく、海外から旅行に来た富裕層の宿泊者の獲得にも成功しています。
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2. ユニクロ
ユニクロは、ファッションの流行に左右されず、ベーシックな定番商品を展開しています。
老若男女問わず受け入れられるデザインで、定番商品に力を入れることで、毎年少しずつ商品自体の生産工程の効率化を実現しています。
ベーシックな服というコンセプトを掲げることで、大量生産が可能になり、低コストと高品質化を両立していることも特徴です。
ユニクロは、「シンプルで機能的ながら手頃な価格」な製品を提供するというブランドイメージを確立しています。
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3. エスエス製薬
エスエス製薬では、美白効果が高い医薬品「ハイチオールC」を展開しています。ハイチオールCは、以前までは「男性向けの2日酔い改善薬」というポジショニングでした。
ハイチオールCに含まれる成分「Lシステイン」は、二日酔い予防だけでなく、肌の代謝をサポートし、メラニン色素を排出する効果もあります。
ハイチオールCは、製品の成分は変更していないものの、ターゲット層やブランドポジショニングを変更しました。
また、多くの女性が継続して飲みやすいよう、1回あたりの服用量を変更し、1瓶あたりの錠数を減らして標準小売価格を引き下げています。
他にも、若い女性が買いやすいようにドラッグチェーンの取り扱いを強化したことで、売上高を飛躍的に拡大させたという事例です。
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4. 無印良品
無印良品は、企業理念に「自然と。無名で。シンプルに。地球大。」を掲げており、ブレない商品ラインナップを確立しています。
あえて特徴を出しすぎない商品が「これでいい」という消費者の考えにフィットしたことで、無印良品らしさが世に浸透し、老若男女問わず支持されているのが特徴です。
企業理念にもとづくブランドの統一感が独自の世界観を築いており、国内外から多くのファンを獲得しています。
5. Apple
Appleは、革新的かつ洗練されたブランドイメージを抱かせることに成功した事例です。
Apple製品のデザインは、シンプルで直感的なものが多く、操作性や機能性などの使いやすさを重視しています。
また、使いやすさを重視する一方で、美しさやデザイン性にもこだわっており、「Apple」というブランドそのものの価値を磨き上げています。
6. ハズキルーペ
ハズキルーペは、メガネ型拡大鏡を販売する企業です。一般的には、高齢者がルーペを利用するというイメージが強く、起用するCMタレントなども高い年齢層でした。
一方ハズキルーペでは、一見拡大鏡のターゲットとは離れた若者がCMに登場していました。
これまでは、拡大鏡は視力の低い高齢者が新聞などを読む際に必要でしたが、スマホ老眼に悩む若年層も求めるようになったという背景があります。
若いタレントを起用することで、新たなターゲット層の獲得に成功している事例です。
ブランディング戦略を重要視すべき理由
ブランディング戦略を重要視すべき理由は以下のとおりです。
- 自社の強みや独自性を明確にできる
- 他社との差別化につながる
- 自社のファンを獲得できる
- 信頼性を高められる
- 価格競争を回避しやすい
- 優秀な人材を確保できる
ここでは、それぞれの理由について詳しく解説します。
自社の強みや独自性を明確にできる
ブランディング戦略を進めることで、自社が本来持っている価値や得意分野を具体的な言葉やビジュアルで表現できるのが大きなメリットです。
これまで曖昧だった魅力を言語化・視覚化することで、自社の「何が強みなのか」「どんな価値を提供できるのか」が社内外に伝わりやすくなります。
また、ブランドの軸が明確になることで、マーケティング施策やサービス開発、デザインや広告においても判断基準が一貫し、ブレのない企業イメージを構築できます。
結果として、顧客やステークホルダーにとっても「企業らしさ」が印象に残りやすくなり、ファン化や信頼獲得にもつながるでしょう。
ブランディングは、魅力を伝えるだけでなく、自社を深く理解し直すプロセスでもあるのです。
他社との差別化につながる
市場には、機能や価格に大差のない商品・サービスが多数存在しており、それだけでは消費者の選択肢として埋もれてしまいます。
そこで重要になるのが、ブランドの個性を明確に打ち出すブランディング戦略です。
ブランドの世界観や背景にあるストーリー、デザインの一貫性、体験価値といった「感情」に訴える要素を丁寧に設計することで、他社にはない魅力を伝えられます。
たとえば、同じコーヒーでも「この空間で飲みたい」「この会社の理念に共感できる」と思わせる要素があるかどうかで、選ばれるかどうかは大きく変わるでしょう。
価格やスペックだけでは語れない共感や信頼の積み重ねこそが、差別化の決め手となるのです。
自社のファンを獲得できる
ブランディングの大きな目的のひとつは、単なる顧客ではなくファンを生み出すことです。
ブランドの世界観や価値観、背景にあるストーリーに共感してもらえれば、商品やサービスの枠を超えて、企業そのものに愛着を持ってもらえます。
こうしたファン層は、一度の購入にとどまらず、繰り返し選んでくれる存在です。
また、良い体験や感動を得たファンは自然と口コミやSNSでの発信を行い、ブランドの魅力を広げてくれる重要な存在でもあります。
価格や機能ではなく、「このブランドだから買いたい」という気持ちが根底にあるため、競合に流れにくく、継続的な売上にも貢献します。
ブランディングは、企業と顧客の間に“信頼と共感”という長期的なつながりを生むための土台となるのです。
信頼性を高められる
ブランディング戦略を丁寧に設計・運用することで、企業の信頼性は大きく向上します。
たとえば、企業の発信するメッセージと実際のサービス内容が一致している、メッセージに統一感がある、といった積み重ねが、顧客にとっての安心材料になります。
こうした一貫性があるブランドは、「この企業なら信じて任せられる」という感情を生み、選ばれる確率が高まるでしょう。
また、ブランドの成り立ちや企業としての想い、これまでの実績などをしっかり伝えることで、新規顧客は安心して購買に踏み切りやすくなります。
既存顧客との関係強化にもつながるため、信頼の構築は売上だけでなく企業の成長基盤そのものを支える重要な要素です。
価格競争を回避しやすい
ブランディングによってブランド価値がしっかり確立されていれば、価格を安くしなくても顧客に選ばれる理由が生まれます。
「このブランドを選びたい」「この体験を得たい」と思ってもらえる状態をつくることで、価格の安さではなく提供する価値そのものに対価を支払ってもらえるのです。
たとえば、同じような商品が並ぶ中でも「信頼できるから」「使うと気分が上がるから」といった感情的な価値が購買を後押しします。
一方で、ブランドの土台がない企業は価格以外の武器がなく、値引き合戦に巻き込まれやすくなるでしょう。そうすれば、利益率の低下やブランド毀損につながるリスクも高まります。
ブランディングは、短期の売上だけでなく、長期的な価格競争から企業を守る戦略的な手段といえるでしょう。
優秀な人材を確保できる
ブランディング戦略を強化することは、採用市場においても大きな武器になります。
企業のビジョンや価値観が明確で、社内外への発信が行き届いている会社には、共感や関心を抱く求職者が自然と集まりやすくなるでしょう。
待遇や仕事内容だけではなく、「誰と、何のために働くか」を重視する人材も少なくありません。
自社の魅力や独自性をきちんと打ち出せていれば、「この会社の一員として働きたい」と思ってもらいやすくなり、採用の競争力を高められます。
結果として、採用のミスマッチが減り、定着率の向上や組織の質の底上げにもつながっていくでしょう。
ブランディングの種類5つ
ブランディングの種類として、以下のようなものが挙げられます。
- インナーブランディング
- アウターブランディング
- BtoBブランディング
- BtoCブランディング
- 商品ブランディング
ここでは、それぞれの種類について紹介します。
インナーブランディング
インナーブランディングは、企業内部のステークホルダーに対して働きかけるブランディング活動のことを指します。
企業理念やビジョン、ミッションなどを従業員に深く理解させ、共感してもらうことによって、迅速なアクションや意思決定を促すことが可能です。
これによって、外部に向けて一貫性のあるブランドメッセージを発信する土壌を整えたり、従業員のモチベーション向上につながります。
アウターブランディング
アウターブランディングは、外部のステークホルダー、いわゆる顧客や取引先、投資家などに対して行うブランディングのことを指します。
たとえば、BtoBブランディング、BtoCブランディング、商品・サービスブランディングは、アウターブランディングの一種です。
企業や製品・サービスのイメージを強化し、認知度や好感度を高めることで、結果として売上アップや価値向上、長期的な事業の成長につながるでしょう。
以下では、アウターブランディングについてより詳しく解説します。
BtoBブランディング
BtoBブランディングは、企業同士のビジネスにおけるブランディングのことを指します。
企業間取引では長期的な信頼関係を築くことが重要なので、信頼性や安定性を訴求することが必要です。
また、製品やサービスの機能・信頼性・アフターサービス・コストパフォーマンスなども重要視される傾向にあります。
BtoCブランディング
BtoCブランディングは、一般消費者に対して行うブランディングのことを指します。
BtoCブランディングはBtoBブランディングと異なり、消費者の心に響くブランドイメージを構築した上で、関係性を築くことが重要です。
消費者のロイヤリティやリピート購入を促進することで、企業の中長期的な収益の向上につながるでしょう。
商品ブランディング
商品ブランディングとは、特定の商品におけるブランディングのことを指します。
商品名やパッケージデザイン、キャッチコピー、プロモーションなどを通じて、商品の認知度や魅力を高めることで、競合商品との差別化が実現できます。
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ブランディング戦略を検討する際の流れ|7ステップ
ここでは、企業がブランディング戦略を構築・実行する際に押さえておきたい7つの基本ステップを紹介します。
- 具体的な目的を明確化する
- 自社の現状を分析する
- 市場や競合を分析する
- 自社の強みや特徴を洗い出す
- ブランドコンセプトを確立する
- ブランド戦略を策定・実行する
- 戦略の振り返りと改善を実施する
それぞれのステップごとに詳しく解説します。
1. 具体的な目的を明確化する
ブランディング戦略を検討する際、最初に行うべきは「なぜブランディングに取り組むのか」をはっきりさせることです。
目的が不明確なままでは、施策が場当たり的になり、ブランドの一貫性も失われかねません。
よく挙げられるブランディングの目的には、以下のようなものがあります。
- 採用力を高め、優秀な人材を確保したい
- 価格競争を避けて適正な利益を確保したい
- 顧客との信頼関係を深め、ファンを増やしたい
- 新規事業・商品をスムーズに浸透させたい
- 競合との差別化を図り、市場での立ち位置を明確にしたい
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こうした目的を言語化し、チームで共有することで、ブランディング戦略の精度と効果を大きく左右するでしょう。
明確な目的があることで、戦略の方向性が定まり、関係者間の連携や判断にも軸が生まれます。
2. 自社の現状を分析する
次に行うべきは、自社の現在地を正確に把握することです。ブランディングは、理想のイメージをつくるだけでは成立しません。
現時点での認知度や顧客からの評価、競合との立ち位置を客観的に捉えることで、目指すべき姿とのギャップが見えてきます。
たとえば、商品力はあるのにブランドが知られていないのか、それとも知名度はあるが選ばれていないのか、など、具体的な課題を明らかにする必要があります。
そのためには、以下のような情報源や手法を活用すると効果的です。
- 顧客インタビュー・アンケート
- SNSやレビューサイト上の言及・反応
- 営業現場やカスタマーサポートの声
- 社内メンバーへのヒアリングやワークショップ
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こうした多面的な視点でデータを集めることで、自社の強みと弱みを客観的に分析でき、戦略立案の土台として活かすことができます。
3. 市場や競合を分析する
自社を取り巻く外部環境を把握することは、ブランドの立ち位置を明確にするうえで欠かせません。市場全体の動向や競合の動きを正しく読み取ることで、狙うべきポジションや差別化の方向性が見えてきます。
特に、自社と類似したサービスや商品を提供している企業が、どのようにブランドを築いているかを観察することで、自社が選ばれるための視点が得られるでしょう。
市場分析の主な対象 |
- 業界全体の成長性・将来性
- ターゲット層のニーズ・価値観の変化
- トレンドや社会的背景(SDGs、Z世代の価値観など)
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競合分析の主な対象 |
- ブランドの世界観・メッセージ
- 商品やサービスの強み・弱み
- ビジュアルやデザインの傾向
- Web・SNSなど発信チャネルの使い方
- 口コミ・評判・ユーザーからの評価
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これらを客観的に把握することで、模倣ではない独自のポジションを打ち出すヒントが得られ、ブランディング戦略の軸が明確になります。
4. 自社の強みや特徴を洗い出す
市場や競合の分析が終わったら、自社独自の魅力や強みを丁寧に洗い出しましょう。他社と差別化を図るには、「何が自社らしさなのか」を明確にすることが欠かせません。
社内外の視点を取り入れながら、次のような項目に注目してみてください。
- 自社が得意とする製品・サービス・技術
- サービス提供時の対応力や接客姿勢
- 経営理念や創業時のストーリー
- 働く人のキャラクターや企業文化
- SNS・レビューなどで高評価されている点
- 社内で大切にしている価値観や習慣
- 他社には真似できないノウハウや仕組み
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日々当たり前のように行っている取り組みの中にも、外から見ると十分に価値となる要素が隠れています。
これらの特徴を具体的に言語化することで、自社のブランドが持つ個性と独自性が際立ち、後のブランドコンセプト策定にも一貫性が生まれます。
5. ブランドコンセプトを確立する
自社の強みやターゲット層、競合との差別化ポイントを踏まえて、ブランドの核となるコンセプトを明文化します。
ブランドコンセプトとは、企業や商品が社会に対してどのような価値を提供し、どう評価されたいのかを端的に表すものです。
言葉だけでなく、ビジュアルや体験、トーン&マナーといった表現にも一貫性を持たせる必要があります。
社内外にブレのないメッセージを発信するためにも、この段階でコンセプトをしっかり固めておくことが、ブランディングの成否を左右します。
6. ブランド戦略を実行・振り返りを行う
ブランドコンセプトが定まったら、具体的な施策へと落とし込み、実行に移します。
WebサイトやSNS、広告、パッケージ、接客対応など、あらゆる接点においてブランドの世界観が伝わるよう整えることが大切です。
また、施策を行って終わりではなく、KPIの設定やユーザーの反応をもとに定期的な振り返りを行いましょう。
効果測定と改善を繰り返すことで、ブランド価値を持続的に高め、長期的な成果へとつなげていけます。
ブランディング戦略を成功させるコツ
ブランディング戦略を成功させるには、以下のコツを意識しましょう。
- 一貫性と柔軟性を両立させる
- 定期的に振り返り・改善を行う
ここでは、それぞれのコツについて解説します。
一貫性と柔軟性を両立させる
ブランディング戦略を立てる際は、一貫性と柔軟性を両立しましょう。
伝えるメッセージやイメージに一貫性を持たせることは、ターゲットの印象や認知の形成において非常に重要になります。
一貫性のあるメッセージを伝えることと同時に、市場の変化に柔軟に対応することが必要不可欠です。
ブランドの核となる部分は一貫性を保ちながら、細かい部分においては変化に対応していくことで、一貫性と柔軟性を両立できます。
定期的に振り返り・改善を行う
ブランディングが成功したかについて、定期的に振り返りや改善を行うことも大切です。
戦略に則って施策を講じているかは、定量的な判断が難しいものです。フレームワークを活用して分析したり、ステークホルダーの声を拾ったりして、必要に応じて戦略を改善しましょう。
顧客にとって魅力的なブランド体験を提供できているかを振り返り、計画的にブランディングを行うことが重要です。
まとめ
ブランディング戦略を成功させるには、自社や市場の現状を把握した上で、自社の強みを活かしたブランドへと育てることが必須です。
ブランディングによって獲得したファンとの関係性を構築することで、中長期的な売上が見込めるでしょう。
もし自社のブランディングでSNSを活用したいとお考えの方は、ぜひSNSマーケティングツール「OWNLY」までご相談ください。
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