近年、Z世代を中心に就職活動のスタイルが大きく変化しており、SNSは単なる交流の場から、企業との接点としても重要な役割を果たすようになっています。
一方で、企業側のSNS活用はまだ発展途上であり、うまく活用できれば他社との差別化にもつながるでしょう。
しかし、採用担当者の中には「SNS採用のメリット・デメリットは?」「SNSの活用方法が分からない」というお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、SNS採用の基本的な概要から、注目されている背景、導入するメリット・デメリットまで解説します。
成功のためのポイントも具体的に紹介するので、SNSを活用した採用活動を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
SNS採用とは
SNS採用とは、X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどのSNSを活用して人材を募集・採用する手法です。
求人情報を掲載するだけでなく、企業の日常や価値観を発信することで、共感や関心を持った求職者と自然なつながりを築けます。
従来の求人サイトや就職情報誌とは異なり、双方向のコミュニケーションが可能なため、候補者との距離を縮めやすいのが特徴です。
特にZ世代のようなSNSネイティブ層との相性が良く、今後の採用活動において欠かせない手段となりつつあります。
SNS採用が注目されている理由
近年、企業の採用活動においてSNSの活用が急速に広まっています。具体的には、以下のような背景があります。
- Z世代を中心としたSNSネイティブ層が採用対象に
- 採用市場における人材獲得競争が激化
ここでは、それぞれの理由について詳しく解説します。
Z世代を中心としたSNSネイティブ層が採用対象に
SNS採用が注目されるもう一つの理由は、求職者の世代交代です。
Z世代と呼ばれる若年層は、日常的にSNSを使いこなす「SNSネイティブ」として知られており、情報収集の手段としてもSNSを活用しています。
2024年に株式会社i-plugが実施した調査によると、2025年卒の学生のうち59.6%が就職活動にSNSを活用していると回答しています。

引用:半数以上の就活生が就職活動でSNSを活用する一方、企業のSNSの活用率は約3割|PRTIMES
最も多い利用目的は「業界や企業への理解を深めるため」で、投稿型SNS(X〈旧Twitter〉)が55.4%、Instagramが51.1%と続きます。
特に企業が発信する「社員の働き方」や「1日のスケジュール紹介」といった内容が、Z世代にとっては企業理解を深める有力な材料といえるでしょう。
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採用市場における人材獲得競争が激化
少子高齢化や労働人口の減少により、企業の採用活動は年々難易度を増しています。
特に中小企業や地方企業では、限られた人材を巡る競争が激しくなり、従来の求人媒体だけでは十分な応募が集まらないケースも増えています。
このような背景から、企業の魅力を自ら発信し、求職者に「選ばれる」ための施策が重要視されています。中でも注目されているのが、SNSを活用した採用活動です。
注目すべきは、企業のSNS活用率がまだ低いという現状です。株式会社i-plugの調査によると、新卒採用にSNSを活用している企業は28.6%にとどまっており、多くの企業が活用できていない状態にあります。

引用:半数以上の就活生が就職活動でSNSを活用する一方、企業のSNSの活用率は約3割|PRTIMES
裏を返せば、今この段階でSNS採用に取り組むことで、競合と差をつけられるチャンスだということです。
SNSでの採用広報に取り組む企業が少ない今こそ、先行的に始めることで競合との差別化を図れるでしょう。
SNS採用のメリット
SNS採用のメリットは以下のとおりです。
- 認知度向上やブランディングにつながる
- 企業の魅力をダイレクトに伝えられる
- 自社に関心が薄い滞在層に訴求できる
- ミスマッチを防ぎやすくなる
- 無料・低コストで実施できる
ここでは、それぞれのメリットについて解説します。
認知度向上やブランディングにつながる
SNSで継続的に発信を行うことで、企業の認知度を高められます。
求職者だけでなく、その友人やフォロワーにも情報が広がるため、接点のない層にもリーチ可能です。
また、企業の価値観や個性を明確に打ち出すことで、採用だけでなく長期的なブランディングにもつながります。
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企業の魅力をダイレクトに伝えられる
SNSでは、企業理念や働く社員の雰囲気、オフィス環境などを日常的に発信できます。
求人票だけでは伝わらないリアルな情報を届けることで、共感や関心を持った求職者との接点をつくりやすくなります。
文章だけでなく、写真や動画を活用することで、職場の空気感やカルチャーも直感的に伝えられるでしょう。
自社に関心が薄い滞在層に訴求できる
求人サイトなどで積極的に仕事を探していない層に対しても、SNS上の自然な投稿や広告で企業情報を届けられます。
こうした「潜在層」は企業名すら知らないケースもありますが、日々の投稿から興味を持たせ、関心を高めていくことが可能です。
ミスマッチを防ぎやすくなる
SNSを通じて企業文化や価値観、実際の働き方を伝えておくことで、応募前から候補者に理解を深めてもらえます。
そのため、入社後に「思っていたのと違う」といったミスマッチを防ぎやすくなり、定着率の向上にもつながります。
採用活動の質を高める上でも、SNS採用は有効な手段です。
無料・低コストで実施できる
SNSアカウントの開設や投稿は基本的に無料で行えるため、コストを抑えながら採用広報を行えます。
求人広告や人材紹介などと比べて費用対効果に優れており、スタートアップや中小企業でも取り組みやすいのが大きなメリットです。
特に予算に制約がある場合には、有効なチャネルとなるでしょう。
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SNS採用のデメリット
SNS採用には以下のようなデメリットもあります。
- 短期的な成果は期待できない
- 運用には手間や工数がかかる
- 炎上・イメージ低下のリスクが伴う
ここでは、それぞれのデメリットについて解説します。
短期的な成果は期待できない
SNS採用は、アカウントを作ったからといってすぐに応募が増えるものではありません。
投稿を継続し、フォロワーを獲得しながら企業の魅力を伝えていくプロセスが必要です。
即効性よりも中長期的な視点が求められるため、短期間で成果を出すのではなく、地道な継続が必要という意識が求められます。
運用には手間や工数がかかる
SNS運用は、投稿の企画や撮影・文章作成、コメントへの返信、投稿後の分析など、多くの工程が発生します。
担当者が明確でなかったり、採用部門だけで完結させようとしたりすると、手が回らず運用が止まってしまうケースも少なくありません。
採用担当だけでなく、広報や現場メンバーを巻き込む体制づくりが必要です。
炎上・イメージ低下のリスクが伴う
SNSは拡散力が高いため、一つの投稿やコメントが予想外の形で広まり、企業イメージを損なうリスクがあります。
不適切な発言や情報の誤発信が炎上につながるだけでなく、過去の投稿が掘り返されて批判を受けることもあります。
運用にあたっては、投稿前のチェック体制やリスク管理を徹底し、慎重に対応する必要があります。
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企業X(旧Twitter)の運用ルールで定めるべき10項目|運用ルールの必要性やコツを解説
SNS採用を成功させるコツ
SNS採用を成功させるには、以下のコツを意識しましょう。
- 自社の魅力を言語化する
- 会社全体の協力を仰ぐ
- 継続して自社の発信を行う
ここでは、それぞれのコツについて解説します。
自社の魅力を言語化する
SNSで求職者の心をつかむには、「どこで働くか」ではなく「誰と、どんな想いで働くか」が伝わることが大切です。そのためにはまず、企業が持つ価値観やカルチャー、求める人物像を具体的に言語化する必要があります。
たとえば、「チャレンジ精神を歓迎する」「チームワーク重視の風土」など、自社らしさを軸に投稿内容を設計すれば、発信にもブレがなくなります。
特にZ世代は共感で企業を選ぶ傾向が強く、価値観が伝わる投稿は惹きつける力が高まります。
日々の業務風景や社員の声などを通じて、言葉と行動の一致が感じられるような表現を意識しましょう。
会社全体の協力を仰ぐ
SNS採用を効果的に進めるには、採用担当者だけでなく、現場・広報・経営層など会社全体の連携が不可欠です。
企業の日常や社員の姿は、実際に働く人たちの協力がなければ撮影も投稿もままなりません。
たとえば、部署横断で投稿用の素材を収集する仕組みや、社内報の内容をSNS用に転用する仕組みを整えると、負担を分散しながら継続的な発信が可能になります。
また、経営層がSNS活用に理解を示し、制度面でも後押しすることで、社内の雰囲気にも一体感が生まれるでしょう。
継続して自社の発信を行う
SNS採用は「始める」よりも「続ける」ことにこそ意味があります。
アカウントを開設しただけで成果が出るわけではなく、定期的に発信を重ねていくことで、徐々に認知度と信頼を積み重ねていく必要があります。
そのためには、あらかじめ運用目的と投稿頻度を明確にしておくことが重要です。
たとえば「週1回のルーティン投稿」「月1回の採用イベント情報」など、一定のルールを設けると継続しやすくなります。
また、インサイト分析を行い、フォロワーの反応を見ながら改善を重ねることも成果に直結します。
まとめ
SNS採用は、採用競争が激化する中で企業の差別化を図る有効な手段です。
特にZ世代のようなSNSネイティブ層に対しては、企業サイトや求人票だけでは伝わらない価値観や職場の雰囲気をダイレクトに届けられます。
一方で、成果が出るまでに時間がかかる点や、運用体制・炎上リスクへの配慮も求められるため、戦略的かつ継続的な取り組みが必要です。
そのためには、自社の魅力を整理し、社内で協力体制を整え、計画的に発信を行うことが大切です。
SNSという身近な手段を通じて、企業らしさを正しく届けられれば、相性の良い人材との出会いにつながるでしょう。