マンションを売却する際、もっとも気をつけなければならないのが、仲介業者が意図的に購入希望者を遠ざける「物件の囲い込み」です。
物件の囲い込みが起こる原因となっているのが、両手仲介と呼ぼれる仲介手数料のシステムに隠されています
この「物件の囲い込み」と「仲介手数料」のシステムを理解することで、マンション売却時の業者選びで失敗するリスクを大きく軽減することができます。
不動産売買における「囲い込み」とは

マンション売却の依頼を受けている仲介業者が自社で買主をみつけたいがため、他社からの紹介客を意図的に断ってしまうことを物件の囲い込みと言います。
このような仲介業者の悪質な囲い込みにより、物件の買い手がなかなか見つからなかったり、不要な値下げを迫られることで売主は知らない間に大きく損をしてしまうことがあります。
原因は「仲介手数料」の二重取りを狙う業者にある


仲介業者が物件の囲い込みをする理由は、自社で買主をみつけ売主と買主の双方から仲介手数料を頂くのが狙いです。
このように買主と売主の双方から仲介手数料をもらうことを「両手仲介」といいます。
本来、不動産の売買では1社が手数料を独占する両手仲介より、売主と買主の双方に仲介業者がつき、手数料を分け合う「片手仲介」が理想だと言われています。
海外では不動産の両手仲介は禁止されている
両手仲介は不動産会社にとっては理想ですが、売主や買主にとってはマイナス面が多く、適正な不動産売買の妨げになる可能性もあることから、アメリカやヨーロッパなどの諸外国の多くは両手仲介を法律によって禁止しています。
売主のデメリットとしては、他社からの客付けを断ってしまうため希望額で売却できるチャンスを逃している可能性がありますし、自社で早く売りたい仲介業者から不要な値下げを迫られることもあり、それにより買主にとっても不利益となります。
せっかく買いたいと思える物件に巡り合えても、すでにお客さんと交渉中などと言われて購入するチャンスを摘まれてしまいますし、運よく元付業者に問い合わせたとしても、囲い込みをするような悪質な業者から買うことになってしまうからです。
このように買主と売主の双方にとってデメリットでしかない両手仲介なので、多くの国では両手仲介という行為そのものを法律によって禁止しています。
両手仲介をわかりやすく例えるなら、1人の弁護士が加害者と被害者の双方を弁護しているようなものだと言われています。

大手不動産会社の両手仲介率ランキング

大手不動産会社は毎年成約件数や売上高を公表しているので、その数値をもとに当サイトが独自で両手仲介率を試算しました。
会社名 | 片手件数 | 両手件数 | 両手率 |
---|---|---|---|
三井不動産 リアルティネットワーク | 44,042 | 80,967 | 65% |
住友不動産販売 | 28,355 | 84,061 | 75% |
東急リバブル | 36,343 | 40,074 | 52% |
野村不動産グループ | 17,146 | 9,852 | 36% |
三菱UFJ不動産販売 | 10,458 | 5,997 | 36% |
三井住友 トラスト不動産 | 14,474 | 9,023 | 38% |
みずほ不動産販売 | 8,453 | 3,952 | 32% |
大京穴吹不動産 | 10,286 | 12,403 | 55% |
大成有楽不動産販売 グループ | 7,346 | 4,835 | 40% |
大和ハウスグループ | 9,503 | 1,969 | 17% |
住友林業ホームサービス | 6,114 | 6,676 | 52% |
スターツグループ | 3,394 | 3,505 | 51% |
近鉄不動産 | 3,367 | 9,222 | 73% |
東宝ハウスグループ | 5,867 | 7,940 | 58% |
日本土地建物販売 | 931 | 94 | 9% |
東京建物不動産販売 | 2,939 | 112 | 4% |
長谷工リアルエステート | 4,176 | 1,880 | 31% |
ポラスグループ ・中央住宅 | 2,509 | 4,406 | 64% |
小田急不動産 | 2120 | 1,840 | 46% |
ナイス | 1754 | 386 | 18% |
朝日住宅 | 1,670 | 1,309 | 44% |
京王不動産 | 1,109 | 965 | 47% |
相鉄不動産販売 | 584 | 1,356 | 70% |
京急不動産 | 876 | 408 | 32% |
センチュリー21 グループ | 33,762 | 45,441 | 57% |
このデータは大手不動産会社のみですが、国内ではいまだに多数の業者が両手仲介をしていることを容易に見てとることができます。
大手不動産だけでなく、中小規模の不動産でも自社で見込客リストは持っているはずなので、多少の両手仲介は仕方のない部分もあるかと思いますが、あまりに両手率が高すぎるのもやはり不自然です。
データも1つの目安にしかなりませんが、仲介業者を選ぶ時の参考にして頂ければと思います。
囲い込みかどうかをチェックするためのポイントは?

自分の物件が囲い込みを受けてないかチェックすることは大事です。
囲い込みを受けてないかチェックする方法をいくつか紹介していきますが、まず大事なのは仲介業者を決めてしまう前に必ず複数の業者で売却査定を取っておくことです。
この複数業者に査定を依頼することが、後の囲い込みを防止する手段となります。
相場価格にも関わらずまったく問い合わせがない
適正な価格相場で売りに出しているはずなのに、まったく問い合わせがない場合は囲い込みを疑う必要があります。
ここで大事なのが「適正な価格相場」です。
この適正価格を知るために役立つのが複数業者からの売却査定です。
少なくとも5社に売却査定を依頼しておけば、おのずと該当物件の適正価格が見えてくるはずです。
A社査定 2,700万円
B社査定 2,650万円
C社査定 3,100万円
D社査定 2,750万円
E社査定 2,700万円
このような5社の査定であればC社の3,100万円を除けば、売却相場が2,700万円前後であることは一目瞭然です。
そして実際に売りに出している価格が2,700万円だとすれば、これは明らかに適正な価格相場だとも言えます。
それなのに問い合わせが入らないというのは、やはり業者による囲い込みを疑うべき事案です。
専任媒介なのにレインズに掲載されていない
専任媒介契約を締結してから7日以内にレインズへ登録する決まりになっています。
この期日を過ぎてもレインズに登録されてないときは、仲介業者による「物件の囲い込み」をされている可能性があるので注意してください。
もちろん期日を過ぎてもレインズに登録されてないときは、「レインズ登録義務違反」となり、宅地建物取引業法違反という犯罪です。
レインズに登録されているか調べる方法はあるの?

基本的にレインズというのは業者専用の情報サイトですので、一般の人がレインズの物件情報を閲覧することはできません。
ただし、専任と専属専任の媒介契約を交わしている売主にはレインズのログインIDが交付され閲覧することができるようになっているのです。
そしてもう1つの確認方法となるのが、レインズが発行している「登録証明書」です。
こちらも先ほどのレインズ売主確認画面からダウンロードすることができますが、面倒な方は専任媒介契約を結んだ仲介業者から受け取るようにしましょう。

契約してすぐに「希望額以下」の買い手を見つけてきた
マンションを売りに出してから、少なくとも2~3ヵ月は希望価格での売却を目指すべきです。
それなのに売りに出して1ヵ月もしないうちに仲介業者から希望価格以下で買いたい人がいますという連絡があるのは囲い込みを疑う事案だと思います。
物件の囲い込みをしている期間が長くなれば、それだけ囲い込みしていることがバレる可能性が高くなるので、業者側としては希望価格以下であっても早くに売ってしまいたいという気持ちが強く働きます。
また、別の考え方として他社が希望価格で購入したいというお客さんを付けてくる前に自社でストックしていた顧客で決めてしまいたいという心理もあるでしょう。
大手であっても対応が怪しい営業マンの場合は要注意
大手不動産会社、仲介会社だからという理由だけで信用するのは危険です。
大手不動産会社は、契約件数も多く、あらゆる騙しの手口を熟知しているという見方もできます。
売主や買主を騙す手口は囲い込みだけではありません、挙動が怪しい営業マンには十分に注意しましょう。
例えば以下のような場合、注意が必要です。
- 売却査定が他の会社に比べて高すぎる
- すぐ内覧者を連れてくるが、物件にあまり興味がないのに買付を入れてくる
- 定期の報告が毎回同じような内容
- レインズの登録証明書をくれない
- 他社からの紹介客が全然入ってこない
- すぐに値下げを提案してくれる
査定価格をわざと高額にすることで媒介契約を取り、ダミーの内覧者を連れてきて買付を入れることで他社からの紹介を断る口実にしているのです。
囲い込みをしない仲介業者はいるの?

もちろん囲い込みをしない仲介業者もたくさんあります。
でも、不動産会社のホームページを見ただけでは素人には判別しづらいと思います。
ですので、素人でも簡単に見分ける方法をお伝えしておきます。
その方法というのが「片手仲介しかしません」と宣言している仲介業者を探すことです。
都心部では、このように片手仲介しかしませんと宣言している仲介業者が年々増えているので、探すのはそんなに苦労しないと思います。
代表的な仲介業者をあげるなら「SRE不動産」が該当します。


SRE不動産ではエージェント制度を導入しており、売主だけのパートナーとしてマンション売却のお手伝いをしてくれます。
今のところ人口が多い都市でしかサービスを行っていないため、対象地域外では利用でないのがデメリットですが、対象地域の人なら積極的に利用したい不動産業者の1つです。
よくある質問

囲い込みや両手仲介に関して、今回紹介しきれなかった部分やネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。
どこも囲い込みをしそうで不安…どうやって仲介業者を探せばいい?
囲い込みを防止するには、SUUMOやマンションnaviなどの一括査サイトを利用することをおすすめします。
大手の一括査定サイトの多くは、悪質な仲介業者を排除するため独自の審査基準を設けていたり、明らかに問題がある悪質業者を排除するシステムが確立されています。
悪質な業者と契約してしまった場合の対処方法は?
いざ専任媒介を締結してみたけど、どうもその業者が怪しいと感じた場合の対処方ですが、無理に途中解除などをせず契約期間が満了する3ヵ月待つのが良いかと思います。
途中解除を申し出ると、色々と理由をつけて違約金を請求されてしまう恐れがあるからです。
少しでも業者を「信頼できない」「怪しい」と感じた場合は、いかなる提案も受け入れずに契約が満了するまで待つようにしましょう。
もし満了を待つ前に仲介業者とトラブルが発生してしまった場合は、地域の宅建協会に相談しましょう。
一般媒介契約なら囲い込みを防げるの?
囲い込み被害の多くが「専任媒介」と「専属専任媒介」で契約をしている物件です。
一般媒介契約でも囲い込みをする業者はいるのでしょうが、専任媒介などのように深刻な問題へと発展せず、売主が囲い込みを受けていることさえ気づいてない可能性が高いです。
一般媒介では1社だけに売却依頼するのでなく、複数の業者へ同時に売却依頼する売主が多いことから例え1社が囲い込みをしても他の業者が客付けしてくれるので囲い込みをする意味がほとんどありません。
まとめ
今回解説したように、不動産業者が意図的に両手仲介を狙って囲い込みを行うことは、売主からすると非常に大きなリスクとなります。
せっかく高値で売れるはずの物件が、囲い込みによって安い金額で手放すことになってしまったら大損です。
囲い込みを完全に避ける方法は、SRE不動産のような「片手仲介のみのエージェント」を利用するしかありませんが、少しでも可能性を減らすために、契約している業者の行動を見張っておきましょう。
もし怪しいと感じたら、媒介契約を打ち切って、別の業者に替えることをおすすめします。
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